100m競争の世界で一時腸腰筋のことを「深部腹筋」と読んでいました。
腸腰筋こそが速く走るために脚を前に運ぶ重要な筋肉だから、との理由です。
この論旨は当時の世界記録保持者モーリス・グリーン選手を擁する
「ハドソン・スミス・インターナショナル」のスミス・コーチの理論でした。
陸上競技選手を広告イメージとして売出し、
それで稼いで選手強化を図り、更に優秀な選手を発掘するサイクルで、
企業に所属して給料を貰いながらトレーニングを続けるしかなかった選手にとっては
よほど画期的なことだったのか「HSIサイコー!」の所属選手からのコメントは散見しました。
ハムストリングや臀筋は動きが目に見える分、鍛えやすいのですが、
腸腰筋は内臓よりも奥にあり、当時の陸上競技選手でも知らない人は多く、
取り上げられたTVの内容を何度も職場で尋ねられたことは記憶にあります。
結局の所、この理論は現在の世界記録保持者ボルト選手も採用しており、
高身長選手には不可能とされていた深い前掲のまま加速期を走り切る
「エクスクルーシヴ・スタート」を実現できたことに尽きるでしょう。
さて、何故このエクスクルーシヴ・スタートが不可能だったのか?
それは腸腰筋の中で特に大きな大腰筋を鍛えると腰痛や股関節痛になってしまい、
練習継続が難しくなってしまうからです。
原因は大腰筋に沿って胸椎12番から恥骨両側までにある小腰筋が
腰方形筋とほぼ同じ位置を背骨の裏表を走り、
対角で拮抗することにより緊張することで、
大腰筋の動きを制限するからです。
非常に深部に在るため、外側の筋肉が硬ければ可動域を増やそうにも手が出ません。
順番に外側から柔らかくするしか無いのが実情です。
師匠はこの小腰筋の施術を最後にやっており、
動きの交差する筋肉で共縮する筋膜腸筋前腹と
大腿直筋の緩和措置をやっておられました。
「黙念師容」が足りませなんだf^・^)