トップページ » 院長ブログ > 未分類 > 手術や大怪我後の代償動作による症状の例(前十字靭帯断裂)

Weblog

2024-07-17

膝の怪我とその後の影響について。まず、右膝前十字靭帯という部分を怪我して手術をした人のお話です。

膝の怪我と手術
右膝の前十字靭帯が断裂すると、膝が不安定になりやすくなります。このため、手術で靭帯を再建する必要があります。
膝前十字靭帯再建術 新札幌病院画像
手術後の影響
手術後、膝が完全に伸びるまで時間がかかることがあります。その間、体重を左足にかける癖がついてしまうことがあります。このことが、他の部分に影響を与える原因になります。

体の他の部分への影響
右仙腸靭帯と深部外旋六筋への負荷
左足に体重をかけ続けると、右の腰の部分にある仙腸靭帯(せんちょうじんたい)と深部外旋六筋(しんぶがいせんろっきん)に負担がかかります。これらの筋肉や靭帯が疲れやすくなり、常に痛みを感じるようになります。
深部外旋六筋
右腰仙の前方変位
負荷を軽減するために、常時左の腸骨を前方に回転させていると仙骨と腰椎5番との間の椎間板が潰れて右の骨盤の中心の骨である仙骨の左うえが前にずれてしまいました。これが原因で、左足に体重をかけるのが不安定になり、左足に力が入りにくくなります。
腸骨の方向
左脚の長さの変化
右膝が完全に伸びないため、左脚の方が長くなってしまうことがあります。このため、内転筋(内もも)と臀筋(お尻の筋肉)が短くなり、これが原因で左の腰の骨(仙骨)が前にずれてしまい、更に深い所で仙骨と腰椎5番を繋いでいる多裂筋がその関節を安定させるために縮みます。これにより、症状が固定化されてしまいます。
多裂筋
症状の改善
このような症状を解消すると、左脚の不安定さが消え、痛みも減り、体の調子が良くなります。

妊娠出産の影響

妊娠や出産によって、骨盤の主要な靭帯は最大2cm伸びるので産後にはこれらの靭帯がかなり緩んだ状態になり、その結果、関節が簡単にずれてしまうことがあります。この状態が固定化すると、痛みや不安定さに繋がり、ご紹介のこの方は三人のお子さんを産んでおり、不十分なリハビリの結果、20年以上後に体を傷めてしまった実例です。出産後ケアの道具である「トコちゃんベルト」のリンク先が詳しいので貼っておきます。

治療とリハビリの重要性

大きな怪我や手術の後は、影響が完全になくなるまで治療やリハビリを続けることが大切です。しかし、治療を続けるためには、画像診断や本人の自覚が必要です。これがなければ、保険での診療が難しくなりますので普段から体の動きに不足が無いか意識してチェックしておく必要があります。

血行障害と代償動作
筋肉が固くなると血行が悪くなり、疲れやすくなります。そのため、体がかばうために自然に別の動き(代償動作)をしてしまい、体の動きが偏ってしまい特定の場所に負担が掛かり元々の怪我とは違う新たな問題を引き起こした典型です。

まとめ
膝の怪我は体全体に影響を与えます。適切な治療とリハビリが大切であり、怪我の影響を減らすためには筋肉の可動範囲を常に正常に保つことが必要です。

posted by 若佐 政儀 | 2024/07/17 - 11:10 |